ペプチドは強酸に耐えたが、金星生命の証拠ではない
三つの合成分子は濃硫酸中で安定し、折り畳まれた。金星雲の化学的可能性を広げるが、生物の存在は示していない。

金星の雲は化学的な破砕機のようだ。雲粒には強い腐食性をもつ硫酸が約98パーセント含まれる。それでも三つのペプチド、すなわちタンパク質の材料であるアミノ酸が短く連なった分子は、数週間壊れず、秩序ある三次元形状を取った。この結果は金星の生命を検出したものではない。地球の生物学に関係する分子群の一つが、従来は不適合と考えられた環境でも構造を保てることを限定的に示した。
マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、略称 MIT)の Jia Yi Zhang が研究を率い、論文は米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、略称 PNAS)に掲載された。Mei Hong、Sara Seager、Janusz Petkowski が上席著者である。Anne Trafton が MIT News で報じた実験では、HHQ、HHQ13、K7という三つの合成ペプチドの実験記号を用いた。二つはアミノ酸七個からなり、一つは長い変種で、分子試料は小さく、多様なタンパク質全体を代表しない。
研究チームは核磁気共鳴分光法、つまり原子核の磁気的性質から分子構造を推定する方法を使った。三つはいずれも濃硫酸中でオメガ・ループを形成した。これはギリシャ文字のオメガに似た折り畳みで、一部のタンパク質にも見られる。硫酸分子がループ内部を支え、水が少ないため加水分解、すなわちペプチド結合を切る反応が抑えられるという解釈である。観察されたのは安定性と立体配座であり、代謝、複製、生物学的機能ではない。
スペイン紙 La Razón の Ignacio Crespo は、前生物化学、つまり生命以前の化学過程と、生命そのものとの境界を適切に強調した。隕石がアミノ酸を金星大気へ運ぶ可能性はあるが、実験は三つのペプチドが現地に存在することも反応を触媒することも示していない。証拠が支持するのは短いペプチドがほぼ純粋な硫酸中で生存し折り畳まれることまでで、金星の現在または過去の生物ではない。宇宙生物学が検討する溶媒を広げる点で重要だが、長い構造と統合された化学系が実際の雲で機能し続けるかが決定的な不確実性として残る。
要点
- 三つの合成ペプチドは98パーセント硫酸中で数週間安定した。
- オメガ・ループを作ったが、生物学的機能は示されていない。
- 化学的可能性は広がるが、金星生命の証拠ではない。
