16万6700個のニューロン地図が雌雄ショウジョウバエの脳の違いを示す
雄の中枢神経系を網羅した初のコネクトームが脳と腹側神経索を結んだ。雌雄で異なる細胞は少数だが、その結線差はより広いネットワークに及ぶ。

雌雄の遺伝的な違いは、異なる行動を導く神経回路へどのように変換されるのか。国際研究チームは、この問いを神経系全体で調べるため、雄ショウジョウバエの脳と腹側神経索を再構築した。成果は、ニューロンとそれらを結ぶシナプスを特定したコネクトームである。同じ成体雄個体について、脳、視葉、そして脊椎動物の脊髄に機能的に相当する構造までを一体として覆う地図は初めてだ。
研究者は1匹の雄Drosophila melanogasterの中枢神経系を極薄の切片にし、各表面を電子顕微鏡で撮影した。人工知能アルゴリズムが数百万枚の画像を整列させ、細胞形状を三次元で復元し、専門家が修正と注釈を行った。Cell掲載の研究は、16万6700個のニューロン、1億2400万個のシナプス結合、個体間で同定できる1万1710の細胞型を収録する。著者らは、人手による校正量を44年分の労働に相当すると見積もった。
チームは雄の再構築を既存の雌の地図と比較した。脳ニューロンの約95%は雌雄に共通する細胞型だった。雄の細胞の5%弱は雄特異的、または雌雄双方に存在しても形や結合が異なる性的二型だったのに対し、雌脳では3%未満だった。これらの細胞は無作為に散らばらず、意思決定や行動制御に関係する高次領域へ集中していた。
この少数の細胞は、結線にはより広く影響した。雄脳のニューロンの約12%に性別と関連する接続差があり、雌脳で報告された割合は4%だった。二型ニューロンの多くは、ハエの性決定に関わるfruitlessとdoublesex遺伝子を発現していた。地図は、これらが密に結ばれた中継点をつくり、感覚信号を異なる回路へ振り分けうることを示すが、個々の結合がどの行動を引き起こすかを単独で証明するものではない。
脳と腹側神経索を連続した再構築に含めることで、研究できる問いが変わる。孤立した区間だけでなく、視覚、嗅覚、味覚の入力から、脚や翅などを制御する運動ニューロンまでの経路を通して追跡できる。データセットはCC BYライセンスで公開され、他の研究グループが検索、比較、仮説検証に利用できる。
雄のコネクトームは詳細な設計図であり、活動中の神経系の記録ではない。求愛、攻撃、摂食、運動を調べる実験の候補部位と結合を提示する。回路が行動差を生む仕組みを確かめるには、生体で活動を記録し、特定ニューロンを操作し、複数個体で比較を繰り返す必要がある。今回の進歩は、その実験連鎖をシステム規模で可能にした点にある。
要点
- コネクトームは雄ショウジョウバエの脳と腹側神経索にある16万6700個のニューロンと1億2400万シナプスを収録した。
- 雄細胞の5%弱が性特異的または二型だった一方、ニューロンの12%に性別関連の接続差が見つかった。
- 完全な回路追跡が可能になったが、活動と行動の因果性は生体実験で確かめる必要がある。

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