アセンブロイドで、視床との接触が大脳皮質をつくる細胞の運命を変える
ヒトのアセンブロイドでは、視床軸索が外側放射状グリアに接触して上層の興奮性ニューロンを増やした。NRXN1を除くと、接触と効果はいずれも弱まった。

感覚情報を大脳皮質へ中継する前から、視床は皮質をつくる細胞の選択に関わっているらしい。9月3日付のScienceに掲載された研究では、視床から伸びる軸索がヒトの皮質幹細胞に接触し、幹細胞が生み出す細胞の種類を変えた。実験モデルでは、その接触によって興奮性ニューロン、とりわけ皮質上層のニューロンが増えた。視床の役割は、完成したニューロン同士をつなぐ段階より前、細胞構成が定まりつつある時期までさかのぼる。
Claudia Nguyen、Aparna Bhaduriらは、ヒト幹細胞から視床と皮質に相当するオルガノイドを別々に育てた。発生開始から約3週間後、それぞれ一つずつを融合し、視床軸索が皮質組織へ伸びられるアセンブロイドを作製した。細胞イメージングと単一核RNAシーケンシングにより、二つの領域が接近する過程と、作られた細胞の種類を追跡した。皮質だけの培養、後から二つの部分を切り離す操作、遺伝子改変が比較条件となった。
視床由来の軸索は、ニューロンに届くだけではなかった。霊長類の皮質に多く、上層の拡大に関わる前駆細胞である外側放射状グリアへ直接触れた。視床入力を受けたアセンブロイドでは、皮質のみの対照より興奮性ニューロンが増え、特に上層型の細胞が多かった。研究チームは初代ヒト皮質組織でも同じ界面を観察し、接触がオルガノイドだけの現象ではないことを裏づけた。ただし、因果関係を調べる操作は培養系で行われた。
仕組みの中心にあったのはNRXN1だった。この遺伝子がコードするニューレキシン1は、ニューロン間の結合を整えることで知られる細胞接着タンパク質である。視床ニューロンのNRXN1を阻害すると、外側放射状グリアとの接触が減り、皮質上層ニューロンの産生も弱まった。公開情報には各比較に使ったアセンブロイド数、神経新生増加の数値的な大きさ、不確実性区間がない。そのため効果の方向は分かるが、ここから大きさやばらつきは評価できない。
視床入力を除く、接触を断つ、NRXN1を変えるという三つの結果は、アセンブロイド内の因果関係を支持する。軸索は前駆細胞の選択を導く環境の一部として働く。ただし、視床だけで皮質構造が決まるという意味ではない。オルガノイドは胎児脳の血流、細胞の多様性、信号の履歴をすべて再現しない。研究チームはこの特有の接触がげっ歯類にはない可能性が高いとみているが、最終的な証明ではない。
NRXN1の変異は自閉症を含む神経発達症との関連が以前から報告されている。しかし今回の実験は症状を測定せず、単一の臨床経路も示していない。得られたのは、到来する脳領域と、まだ運命を選んでいる細胞との間にある、早期で観察可能かつ遺伝学的に操作できる接点である。この出会いがヒト発生のいつ起き、皮質の最終的な細胞構成にどれほど寄与するかを、解剖学的推測だけでなく実験で問えるようになった。
要点
- 成熟した神経結合ができる前に、視床投射はヒト皮質前駆細胞へ直接接触した。
- 視床入力は上層の興奮性ニューロンを増やし、NRXN1の阻害は接触と産生効果を弱めた。
- 因果関係はアセンブロイドで検証され、初代ヒト組織でも界面が確認されたが、公開資料には効果量、反復数、不確実性がない。

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